さかいLRT研究交流センターがオープン

大阪産業大学と堺市の共同事業

堺市 金田徳蔵

 堺市の都心部に位置する山之口商店街は、戦前、泉州一の商店街でありましたが、今やシャッター通り化しています。しかし近年、商店街の空店舗に大小路夢クラブの「夢庵」や、NPOが運営する「子育てサポートルーム」が開業しています。こうした中で商店街中心部の開口神社横に9月5日、「さかいLRT研究交流センター」(以下、センター)がオープンしました。大阪産業大学と堺市の共同事業で設立したもので、地元に密着してLRT整備にかかわる調査・研究を行うための研究拠点で、パネルや映像の展示も行っています。

<センター開設の経緯と目的>

 LRTは道路空間内を走行するという特性上、新規路線の整備に当っては、既存交通(特に自動車)や、沿道住民・商店へ与える影響も大きくなります。そのため、LRTの整備を推進するためには、市民に十分な説明を行い、合意形成を図ることが重要です。

 現在、堺市では東西交通軸の強化と、沿線まちづくりを支援・促進するため、臨海部〜堺駅〜堺東駅〜堺市駅を結ぶ東西鉄軌道をLRTで計画しています。

 また、南北に通る阪堺線の存廃の課題もあります。

 センターは、LRTの啓発を行おうとする堺市と、市民との交流を行いながらLRT整備に関する調査・研究を実施したいという大阪産業大学が、お互いを補完する形で実現した共同事業です。

 センターを運営する大阪産業大学の研究活動を通じ、まちづくりや都市交通問題解決に対するLRT整備の意義を市民に理解してもらい、堺市の東西鉄軌道事業をより良いものとすることが、当センターの開設目的です。なお、堺市はセンターの部屋代や光熱費等を負担しています。

<センターの機能>

 センターには主に3つの機能があり、これらの機能を有機的に発揮することで、地域との協働を実現していきます。

  1. 情報発信・提供機能=LRTとそれに関連するまちづくり、既存交通(阪堺線等)に開する情報を市民 に対してわかりやすく発信・提供する機能
  2. 情報収集・記録機能=LRT整備にかかわる各種情報・データを収集・記録する機能
  3. 地域との交流機能=市民や関連する主体等と交流することで、LRT整備と研究を推進する機能

<研究課題>

 センターの主な研究課題は以下の4点です。

  1. 道路空間再配分に関する社会的コンセンサス形成に関する研究
  2. LRT整備と中心市街地活性化の関連に関する研究
  3. 阪堺線等市内の既存交通との連携によるネットワーク形成効果に関する研究
  4. LRTの景観まちづくりへの寄与に関する研究

 センターは、「まちづくりにLRT整備が果たす役割を市民にもわかりやすく説明し、社会的な合意形成を図る」ことを目的としていることから、単に分析結果を提示するだけではなく、地域との協働によりLRT整備にかかわる合意を能動的に形成しようとするものです。

<今後の展開>

 堺市のLRT整備は、わが国最初の既存市街地の道路への新線建設となる可能性が高く、きわめて重要な先進的事例となることが期待されています。このことから、センターは、今後以下のような主旨で研究を実施していきます。

  1. 既存資料やアンケート・ヒアリング等により必要データの収集を行うのは当然であるが、研究過程およ び成果が、LRT整備のためのコンセンサス形成に資するよう、地域との交流を重視する中でデータを 収集・分析し、また先導的な役割として能動的に人々の意識の変革をもたらすような地域協働的アプローチを行う。
  2. 今後全国的なLRT整備に資することができるよう、調査データを経年的に収集し、記録・データベース化を図ることができるよう進める。
センターの概要

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