私の一冊

沖縄文化論 − 忘れられた日本
(岡本太郎著、中央公庫 ¥686+税)

推薦者:伊藤可奈子(アトリエK)

 岡本太郎といえば「太陽の塔」、岡本一平・かの子の息子、「芸術は爆発だ」の芸術家。その程度の知識しかなかった。3年程前からマイブームの沖縄。それがきっかけで知った「沖縄文化論」。岡本太郎が東京美術学校中退後ソルボンヌ大学で文化人類学を学んだと知ったのはつい最近のことだ。沖縄の戦前・戦後を通しての辛く悲しい歴史も、戦後の学校教育の中では教わらなかった。沖縄を知りたいと思ったのも日本に住みながら「この国」のことがよく見えていないせいでもある。沖縄文化論は1972年中央公論社から出ている。

 その当時の私は、沖縄へはパスポートが要る、米軍の放出品には面白いものがあるなどと外側の興味しかなく、沖縄返還もアメリカ文化にとっぷり侵食された若者文化の中での1つの出来事くらいの認識でしかなかった。この出版がどれだけの思いを込められたものなのかは今になって改めて感じるのだが、何事にも時期があるとすれば、私にとっては今が沖縄との出会いなのだろう。

 [何もないことの眩暈]は、岡本太郎でしかありえない表現だろうし、くらくらしてしまう口述なのか、軽妙でビジュアルな表現というのか、おもしろくて読みやすい。沖縄に興味のある方もない方もぜひ読んでいただきたい1冊です。 沖縄の方言に「いちゃりばちょうでぇ ぬう びだぁてぬあーが」という言葉があります。「行き会うものみな兄弟、何の隔てがあろうか」という意味だそうです。世界中の皆がこういう思いになれば、世界はもっと平和になるでしょうに。


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