サツマイモの水気耕栽培
和泉中央駅ビルの屋上緑化について
大阪府都市開発(株) 前田秋夫
環境問題への積極的な取り組みは、企業にとって非常に重要なテーマとなっている。大阪府都市開発鰍ノおいても、これまでも省エネ機器の採用、ごみの適切な処理、3Sへの取組み等環境に配慮した対応を実施してきた。しかし今まで以上に環境対策を重視する必要があるという認識から、より前向きな取組みをスタートさせることとした。最近取り組んでいる主な項目には、@環境ISOの取得A環境に配慮した建築計画の推進B屋上緑化・周辺緑化の推進−などがあるが、このうち屋上緑化について、和泉中央駅ビル屋上において、「サツマイモの水気耕栽培」を利用した屋上緑化の試験施工を実施したので、その概要を報告する。
1.なぜ「サツマイモの水気耕栽培」なのか
屋上緑化を実施するにあたり、次の4つの方法について比較検討した。
@ ガーデニング型緑化
A 薄層芝生緑化
B 薄層セダム緑化
C サツマイモの水気耕栽培による緑化この中で、Cは少し異質ではあるが、テレビでの報告を見た人がおり、候補とした。
選定基準としては、以下の7項目とした。
@ ヒートアイランド対策として効果がある。
A 参加型である。
B あまり手間がかからない。
C 安価である。
D 変化がある。
E 面白い。
F 景観対策として効果がある。最終的に、試験施工ということもあり、「サツマイモの水気耕栽培」が面白そうだという意見が強く、この方法を採用することとした。
2.サツマイモの水耕栽培の概要
(1) システムの概要は左図のとおりであり、液肥と酸素を水に混入し、ポンプで圧送することにより育成する。試験施工ということで1ユニット(10m×10m)の面積とした。基本的に緑化という意味では、土は不要であるが芋を収穫するためには、土が必要となる。
(2) サツマイモの種類は、次の4種類を採用した。
@ 鳴門金時=食用
A スイートガーデン=葉・茎を鑑賞
B はならんまん=観賞用(花が咲く)
C 翠王=葉・茎・芋を食用(焼酎用としても使用)(3) 栽培の様子
@ 苗付け=本来は4月に苗付けをするのがベストであるが、少し遅れて6月となった。(写真1)
A 成長の様子=少し心配ではあったが、見事に成長した。(写真2)
B 芋の収穫=40cmの植木鉢を20数個設置し1鉢あたり15〜20個の収穫があった。
写真1
3.参加型の手法
<成長の様子>写真2
7月6日
8月11日
9月20日
10月12日今回の屋上緑化の実施にあたって、参加型というのが大きなテーマの1つであった。
出来る限り多くの社員に参加してもらうため、「サツマイモの里親募集」を実施した。
里親の仕事としては、@苗付けA生育を見守るB芋床づくりC芋の収穫D後片付け−の5項目・5日間とした。20数名の応募があり、昼休みを里親活動時間とした。
最初は戸惑う人も多かったが、だんだん生育状態が気になり、途中で時々見に行く人も多かった。
4.ヒートアイランド対策としての効果
断熱効果を測定した結果、屋上面と葉茎の下で5度程度の効果があった(=別表)。きちんとした形で測定しなかったので信憑性に問題はある。NPOビオトープ京都のデータによると、ベストの状態で測定すると、10℃以上の断熱効果があるとされている。
<効果について(実測結果)>
測定時
11時
14時
外気温度
33.3℃
32.0℃
@屋上面温度
39.0℃
38.0℃
A緑化面温度
33.7℃
34.0℃
温度差 A−@
−5.3℃
−4.0℃
※ 測定日:平成17年7月28日・晴れ
5.緑化としての評価
サツマイモの育成ということで、緑化の状態に変化がありそれなりに面白かった。ただ12月から4月ころまでの5ヶ月間は何もない殺風景な状態となるため、景観という視点では、問題があり何らかの対応が必要となる。
おわりに
屋上緑化が、注目されだしたのは、つい最近のことである。これからは色色な手法が出てくると考えられる。今回の「サツマイモの水気耕栽培」は、まだ実績もあまりなく、評価もこれからといえる。しかし変化・参加・ヒートアイランド対策という視点に立てば、有力な手法の1つといっても過言ではない。来年ももう少し面積と参加人数を増やし、芋作りに精を出したいと考えている。