私の一冊

新・廃棄物学入門(田中勝著、中央法規出版発行)

推薦者:小山二生(地域都市計画センター・コア)

 私は最近、最終処分場の設計も行っていて、特に谷部における防災面から見た安全性を主に設計を行い、自治体と協議の上、許可を得るというものです。施主はバブル期に多量の不動産を購入し、その時の借入金がもとで倒産まで追い込まれた状況で、私自身が施主にかわって地域住民、自治会、自治体の協議を行うこととなりました。これまでは土木技術的なことだけ責任を持って行ってきましたが、廃棄物(ごみ)の中身、また廃棄物処理法など普段あまり知ることのない知識を求められるようになりました。

 そこで私のお勧めの一冊は「新・廃棄物学入門」(田中勝著)。「ごみが出るのは豊かな証拠です。本当に貧しければごみは出ません」。これはアフリカの貧しい生活ぶりを説明したもので、捨てられたものは全て持ち帰り利用され、ごみ処理問題は無いと言われています。購買力が高まれば家庭に持ち込まれるものも多くなり、家庭から排出される“ごみ”も当然多くなります。このようなわけで一般的には、先進国の方が開発途上国より、都会の方が農村地帯より排出“ごみ”が多くなっています。

 同書によると、日常生活に伴って住民一人から毎日排出される“ごみ”の量は、日本、イギリス、ドイツでは約1kg、アメリカでは約2kgと多い。しかし開発途上国では約300g。都市で見ると、東京で1.6kg、ロンドンで1.5kg、ニューヨークで2.4kg、パリで2.5kg、バンコクでは500gだそうです。日本の排出量の推移は、昭和35年で500g、昭和40年で700g、しかし近年では1kg〜1.1kgの範囲で推移しており、これは国民の所得に比例したものであることが言えます。

 この本は身近なごみ問題がわかり易く書かれていることと、地球温暖化、循環型社会にも触れられていることから、私も最もわかり易いごみの入門書として読むこととなりました。同書のほんの一部を紹介しましたが、ぜひ一読をお勧めします。


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