尾崎大阪産大教授が講演

「土壌汚染の現状と修復方法の実際」

原論分科会を開催

 地域デザイン研究会原論分科会が4月19日、大阪府職員会館会議室に参加者16人を集めて開催された。今回は講師に尾崎博明大阪産業大学工学部教授を招き、「土壌汚染の現状と修復方法の実際」をテーマに講演していただいた。講演と質疑応答の一部を紹介する。 1993年の環境基本法制定で、たとえ無過失であっても賠償責任が問われるようになった。そして、2002年の土壌汚染対策法によって、土壌汚染により健康被害が生じるおそれがあると認められる土地を売ろうとするときに、土壌汚染があるかどうかを調査する義務が生じることとなった(ただし、法施行以前の事件には遡及されない)。これらのことにより、近年土壌汚染の判明事例は増えてきている。

 最近の土壌汚染事例では、▽大阪のバッテリー工場から基準の800倍の鉛▽滋賀のセメント工場から54倍の6価クロムと鉛▽兵庫のガラス工場から630倍のヒ素▽土壌改良剤として埋め立てに使われた土に6価クロム、フッ素−など深刻な事態が起こっている。

 講演では、地下にあるヒ素が地下水により井戸に混入し、それを飲んだために指がとれるなどの被害例が紹介された。

 汚染土壌の浄化技術は、固化法、化学的処理、土壌洗浄、真空加熱分離法、熱脱却、焼却、などの方法がある。

 土壌汚染の発見から調査、修復などがシステム化されているかという問には、土壌汚染の評価法がマニュアル化されつつあるが、多くの場合、現場、現場でその都度検討しているのが現状。

 いったん土壌が汚染されれば、その修復には膨大な費用が生じる。関係機関の調べでは、全国に30万〜40万サイトで汚染されており、修復には5兆円〜13兆円の費用が必要になるとされる。

 土壌汚染修復が新しい産業として期待する向きもあるが、資金負担が可能な企業も限られており、環境施策は経済縮小の傾向があるため、多くは期待できない。技術の開発に熱心な大手ゼネコンもあったが、最近ではその分野の組織を縮小している。

 講演を通じて、土壌汚染にかかる現状、修復技術などについて学ぶことができた。

 そもそも、土壌汚染を起こさせないシステムの強化、及び過去に汚染された土壌の修復技術と手続き等のシステムがより一層強化されることが望まれる。

(事務局長・鎌田徹)


HOME  潮騒目次

inserted by FC2 system