私の一冊

「佐賀のがばいばぁちゃん」

「笑顔で生きんしゃい!」

作:島田陽七

推薦者:伊藤可奈子(アトリエK)

 話題の映画「佐賀のがばいばぁちゃん」の原作である。漫才師の島田陽七の子供の頃の実話だ。

 広島で被爆した父を早くに亡くし、小さな居酒屋で生計を立てる母には、まだ幼く母を恋しがる子供を充分みてやれる余裕もなく、佐賀の母の実家に預けられた。このばぁちゃんの元で中学卒業までを過ごすが、このばぁちゃんがとんでもなく「がばい=すごい」人で面白く暖かくて大きい。時々夕飯が無いときもあるくらい生活は大変だったのに、貧乏には明るい貧乏と暗い貧乏がある。家は明るい貧乏だと大笑いするのだ。「ばぁちゃん、お腹へった。晩ご飯は?」「気のせいだろ」と言ってさっさと布団にもぐり込む。朝ごはんは?と聞くと「昨日食べただろ。学校行ったら給食がある」と笑って仕事に出かける。

 運動会のお昼。親もばぁちゃんも見には来られない。家族と昼食を食べる友達を横目に一人教室で日の丸弁当を食べる。そこに担任が来て、腹をこわしたから食べてくれとエビフライの入ったおかずいっぱいの弁当を渡す。なぜか担任が代わっても毎年運動会には不思議に先生がお腹をこわして代わりに弁当を食べてくれという。

 う〜ん、こんな時代があったんだ。映画は観ていないが、読みながら涙が出てしまう。でもすぐにばぁちゃんの一言に笑ってしまう。とても電車の中では読みづらい本(?)でもある。


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