2006ワークショップを開催

研究担当幹事 友田研也(大阪府)

 地域デザイン研究会のワークショップが8月26日、大阪市立弁天町市民学習センターで開催され、研究分科会の2年間の成果報告、受託事業の概要報告、今中昌男氏の講演「身近なところから見た東京と大阪」などが行われました。

 従来、ワークショップは、地域デザイン研究会のメンバーが都市・まちづくりに関わる問題意識を高めながら自己研鏝を行い、得られた成果をとりまとめ、報告し、意見交換する場として設けられていました。

 2005年に任意団体地域デザイン研究会とNPO法人地域デザイン研究会が統合され、従来の研究分科会に加え、“都市・地域づくりに関わる受託事業”のプロジェクトチームが立ち上がるなか、所期の目的は異にするが、活動内容としては似かよった二つの研究会が併存するような状態が生じました。任意団体地域デザイン研究会の主要事業であった研究分科会活動の位置づけを明確にしておく必要があるということで、前任の南氏がこれを検討され、これに統合化に伴う修正を加えると、下記のような整理となります。

 @地域デザイン研究会の会員は、日常業務のなかでまちづくりに関わっており、現状のまちづくりに対する「高い問題意識」を有したメンバーから構成されている。

 A研究分科会は、立場を異にするメンバー相互の情報交換と健全な議論をとおして、問題意識を高め、自己研讃を行う場として機能すべきである。

 B各会員は、この自己研讃の結果を日常のまちづくり業務へ還元し、新たなまちづくりを牽引していく役割を担うことが望ましい。

 C地域デザイン研究会は、これらを研究成果として発信し、まちづくりに新たな視点を投じるリーディング集団としての役割を担うことが望まれる。

 D会員・分科会相互、“都市・地域づくりに関わる受託事業”との連携を強めることにより、関西における最強のまちづくりネットワークを形成することが可能と考える。

 E地域デザイン研究会は、このような会員ニーズに呼応した建設的な研究分科会を構成するとともに、各会員には、創造的な活動のための自己への投資として、研究分科会活動への積極的な参加を促す。これについては、さらに会員の意見を集めて検討を加えていかなくてはなりません。

 研究分科会の活動報告(概要)は次のとおり。

まちと宗教施設の関係分析に関する研究分科会

1.発表の概要

「住民の心の拠り所がなく、安心できないまちづくりでは意味がない。」なぜならば

@今のまちでは心安らかに住めない。

A生命と伝統・習慣が尊重されていない。

B良好な人間関係がなければ安心して住めない。

C日本人としてのアイデンティティが希薄になっている。

D宗教の果たす役割を無視できない。

という問題提起のもと、生活者がまちの現状をどのように評価し、将来に向けて何を求めているのかをアンケート調査により探り、さらに、網掛祭(奈良県桜井市)、砂掛け祭り(河合町)など、祭りと地域のアイデンティティとの関わり等について報告。

2.フロアの意見

 「まつり」採り上げる基準として、「由緒があり、民衆に支持され、継続していること」としている。伝統のあるものは継続し残って行くが、消えていくもの、消えつつあるものも多く、それが、日本の伝統の中で消えていく側面を示しているとも言え、それを明らかにしていくことを視点に人れて欲しい。

まちを視る分科会

1.発表の概要

 これまでの「まちと個性」、「まちとゆとり×居住」、 「まちと中心機能」各分科会を発展・統合させ、平成17年度、「まちを視る」分科会としてスタート。まちづくりを行ううえで、まちの歴史や仕組みを把握し、比 較・評価を行うことが重要。本分科会では、まちを視 ることを原点に、特色のあるまちを実際に訪れて、視 て、歩き、話を聴いたうえで、評価・分析を行い、これをデーターベース化し、情報発信していく。

 フィールドワークとして、下記3地区を報告。

@これからの沿線まちづくり京阪本線くずは駅周辺(枚方市)

Aガーデンシティ舞多聞の試み(神戸市垂水区)

B創造と発信おステージ神戸市波止場町TENXTEN(神戸市中央区)

2.フロアの意見

  ▽視る「まち」を選ぶ視点として、成功事例、キー・パーソンといった採りあげ方もあるが、どのようなまちに住んでいるのかといった点に着目して、「住 み」「働き」「憩う」「交通」といった生活の視点(例 えば美化・清掃活動から始まって河川環境にも視点を 当てる等)からまちを視れば事例はいくらでもある。

 ▽事例を見ていくと、くずは駅前のように、通常の補助金の範囲では出来ないものもある。こういった事 例収集を通して、現行制度にはない良さを行政にも訴えて行く必要がある。

原論分科会

1.発表の概要

 都市における環境要素を掘り起して、未だ明確な概念ができているわけではないものの、「環境都市計画」 といったものをつくっていきたいと考えから取り組み始めた。我々は環境をほとんど知らないという現実に直面し、現時点では環境系の講座を開講。マニユアックではあるが最先端の研究内容について話を聴く形で進めてきている。

@「土壌汚染の現状と修復方法の実際」=大阪産業大学工学部都市創造工学科 尾崎博明教授

A「微生物による環境保全技術」=立命館大学理工学部 化学生物工学科 久保幹教授

2.フロアの意見

 ▽これまでの分科会で得てきた情報からは、工場の土壌汚染などは都市計画では取り扱えない問題を抱えていることが判ってきただけでも、意義のあること。

 ▽異分野のことを知ることは、都市・地域整備に携わる者にとって大切なこと。若い方にも認識いただき、見識を広げていただきたい。

都市・地域づくりに関する受託事業報告

1.発表の概要

 NPOの受託事業と設計コンサルタント業務とは違いは、「根底にある深層的な問題点について、いかに考えるべきか」といった、設計業務の手前の領域の問題に対処すること。この主旨に沿って行ってきた下記委託業務の成果について報告した。

@西淀川地域の沿道まちづくりのあり方に関する調査(あおぞら財団)

A枚方市牧野駅前広場事業化調査(枚方市)

B堺市臨海新都心整備戦略調査(堺市)

C鉄道活性化と公共交通のあり方に関する調査(大阪高速鉄道(株))

2.フロアの意見

 ▽受託事業は、NPOの果すべき役割の検証用に実施してきたつもりである。実施する中で、行政・住民との関係の持ち方は難しいと感じている。

 ▽NPOとしては、「受・委託」ではなく「協働事業」として展開したいと言ってきているが、行政の仕事を受けるときは従来の枠に縛られる面がある。

 ▽NPOで今後取組むテーマとして、「公共交通機関とまちづくり」については、関係者が多い現状から、これまでの研究成果をまとめてPRすれば、地域に対して貢献できる点は多々あるように思う。


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