身近なところから見た東京と大阪

住友信託銀行(株) 今中昌男

 今年2月、約5年半振りに大阪に帰ってきて、御堂筋沿い、船場辺りではオフィスビルの立替も進み、中之島周辺のプロジェクトが動き出し、大阪も結構元気になってきたと思った。しかし、落着いて周りを見ると、東京に比べて個人の元気がないと感じる。大阪という都市社会が狭く、積極的に新しい切り口のビジネスの仕方をしなくてもそこそこの機会が確保できる環境にあるのが要因の一つ。

 仕事柄、工場跡地等に商業施設や住宅を導入する複合開発をコーディネートさせてもらえるよう企業にアプローチする。東京ではなじみのない企業も多く、狙いを付けて飛び込み営業をしても、工場敷地を所管する総務部の人にはなかなか会ってもらえない。工場の入口には守衛所があり、なかなか中に入れてもらえない。会ってもらうために随分知恵を絞ることとなるが、これが個人を育て、チームで行うことで組織に活力をもたらす。

 大阪ではルートをたどれば会いたい先に行き着くが、東京は都市社会が大きく、人間関係・企業関係の広がりに限界があり、常にこのような意識を持たなければならない。この点が、個人ベースでの東京と大阪の元気の違いになっているように思う。

 ビジネスでの新しい取り組みが目立つのと同様、自分自身のやりがいを満足させるための私的なネットワーク作りも盛んである。従来の人間関係だけでは都市全体の動きを把握しがたいからであろう。このようなネットワークの一つに東京いのちのポータルサイトがある。地震が発生したときに、行政に頼らず、自ら命を守ろうと、早稲田商店会会長で衆議院議員の安井潤一郎氏などが設立したもので、行政・大学・民間の方々が参加されている。ポータルサイトで飛び交うメールを拝見したが、タイムリーに情報交換し、あれよあれよと言う間に平塚市や板橋区などでの木造住宅の耐震補強補助制度の実現に大きな力を発揮した。東京の大きさ、人の多さを私的なネットワークを活用して、目的を達成した良い例と感じる。

 見知らぬ人とのネットワークで、人脈を広げ、目的を達成していく、新しいビジネスチャンスを求めて新しい所へ飛び込んでいく、このあたりが東京と大阪の、個人に落としこんだ場合の元気の差と感じた。

(後半のまち並みの紹介にっいては省略させていただきました)


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