お伊勢さんのお祭り

粛・凛・勇

中尾恵昭

 最近、お伊勢さんのお祭り、伊雑宮の「御田植祭」と内宮の「御木曳」に続けて参加しましたので、その紹介をします。

 

 

◆御田植祭◆


忌竹を奪い合う「竹取神事」


式年遷宮御敷地


曳き手が力を合わせて乗り切る

 伊雑宮は内宮別宮で、志摩市磯部町上之郷にあり、毎年6月24日に御田植祭が盛大に行われる。

 その日はあいにくの(いや、ふさわしい)雨で、近鉄特急で行くも普段上之郷駅は無人駅のため臨時停車もなく、志摩磯部から引き返す電車も30分待ち。タクシーで宮そばまで乗りつけることになった。

 祭りは11時から始まり、平安期の古式ゆかしい衣装を纏って御前でお祓い、拝礼ののち田道人、早乙女らが苗
を取り、それが終わると、地元の人達によって「竹取神事」が勇壮に行われる。取った竹を持って帰って飾って
おくと五穀豊穣、家内安全になると聞いた。

 その後、田楽にあわせ田植えが行われる。昼からは参道100mほどを2時間もかけて歌や踊りが繰り広げられる「踊り込み行事」が開始される。これは神を讃えるばかりでなく、田植えの一連の重労働に対する慰めや憂さを晴らす目的もあったと考えられている。

 ただ、主役は酒を浴びるほど飲んで前後不覚になった若者達で、その間、早乙女達は雨に打たれながらじっと待っている。その耐える姿がけなげであり印象的であった。

 最後は、御前で「千秋楽の仕舞」で見栄をきって一連の行事が終わる。聞くところによると7つの大字が輪番制で行事を行うことになっており、その成否が村の浮沈に影響することもあっただろうと推測される。

 なお、この御田植祭は千葉県の香取神宮、大阪府の住吉大社とともに日本三大御田植祭といわれ、1990年(平
成2年)には国の重要無形民俗文化財に指定されている。また、今年から新しい料田で行われることになった。

◆神宮式年遷宮御木曳◆

 第62回伊勢神宮式年遷宮は2013年(平成25年)に行われ、それに向けご用材を神宮域まで運ぶのが「御木曳」行事で、外宮の陸曳と内宮の川曳がある。この機会を逃すと今度は20 年後となることから、7月22 日、「川曳」に出掛けた。

 午前10時、五十鈴川の浦田橋下流からホラ貝や木遣り歌に合わせて、旧神領民が御料木をそりに乗せ水しぶきをあげて川を奉曳し、内宮領へ運ぶ神事が始まった。えらいもので橋の下を神木が通る際は警察が出て規制し、人・車とも通行止めとなる。その日はあわせて4回奉曳団が次々と途中何回か休憩や食事を取りながら上流へ御神木を進めていく。祭りには酒が付きものだが、近くの酒屋で一杯飲みながら聞いた話では、昔は酒を飲んでいたが、事故が起こるとその木は使えなくなることなどから、最近はもっぱら“しらふ”で奉仕することになっているとのことである。

 木曳きの間に時間があったので、清冽な五十鈴川沿いに鬱そうと繁った参道を歩んで正宮にお参りし、隣接した「式年遷宮御敷地」を仰ぎ見る。話を聞くと昨日皇太子殿下がこの「川曳」に参加されたとのこと。

 さて、木曳きの現場に戻ると途中段差のある堰が難所で、流れが激しい中を曳き手が力を合わせて乗り切る様は勇壮であり、身体が引き締まる思いがする。そしてやっと最後に宇治橋の手前の坂を持ち上げ、神領に入ってめでたく終了となった。


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