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ニュージーランドの都市

平峯 悠

 今年の4月、ニュージーランドのミルフォードトラックのトレッキングに参加したが、その行程の中、NZで滞在した2つの都市について“まちを視る”という視点で都市の成り立ちや特徴を記す。


<ワカティブ湖に広がる住宅地>

●ニュージーランドの国柄

 ニュージーランド滞在中、イギリスと変わらないということを常に感じていた。これは国の成り立ちから当然のことなのであろう。1769年有名なキャプテン・クックが南北両島を探検し、1840年英国の植民地から自治領を経て、1947年に英国から独立した立法機能を取得した。立憲君主国であるが、元首はエリザベス女王である。旅行のガイドからイギリスとの違いを聞かされたのはその歴史的経緯によるものである。オーストラリアが流刑植民地であったのに対し、ニュージーランドは探検や観光の植民地となったことは、その後の言語や居住、都市建設に差異を生じさせた。

●クイーンズタウン

 世界的に有名な観光地・保養地であるクイーンズタウンは、ゴールドラッシュで一攫千金を夢見てやってきた金鉱夫が「女王(ビクトリア)が住むにふさわしい町」と賞賛したことに由来する。

 居住人口約7500人のところへ1日3500人以上、年間1200万人の観光客が訪れというからニュージーランドが誇る大リゾート地である。町の中心部は歩いて観光できる大きさ、歩行者とクルマが完全に共存している楽しい街。勧められたが断ったバンジージャンプは発祥の地であり、夜遅くまで挑戦する人が絶えない。

 自動車は市民の交通機関であるが、そのクルマはボロボロ。ニュージーランドはクルマを生産せず輸入に頼っているが、中古車で安い。1000NZドル(8〜9万円)出せば購入できる。それも路上に止めてある車に値段が張ってあり、さらにサイドミラーにはくもの巣までが張っている。道具としては十分である。長期滞在者の多い観光都市でこのようなもてなしができるリゾート地を日本も手本にすべきである。

●クライストチャーチ

 ニュージーランド南島の最大都市であるクライストチャーチ市は、人口31万人、面積は大阪市の約2倍の46000ha、最も古く開拓された都市である。「イギリス以外で最もイギリスらしいまち」と形容されるが、先住民族マオリ族を力で制圧しイギリスの植民地にし、自国の都市を建設することによって生まれた都市。街のシンボルであるクライストチャーチ大聖堂やイギリスの影響を残す歴史的建造物が多くのこり、それらは文化施設として活用されている。

 このような資源が多く残されているのに加え、市域の約1/8の5600haが公園や公共空間であることから、ニュージーランドのガーデンシティーと呼ばれ、観光都市としても有名である。

〈都市公園〉

 1997年マドリッドで開催された「国際花の街コンテスト」で6つのトップ・ガーデンシティーの1つに選ばれたように、公園はクライストチャーチの特徴である。中でもハグレー公園は、面積は182haでゴルフ場、ラグ
ビー競技場、サッカー場などが数多くあり、市民が到るところで楽しんでいる。ゴルフ場ではホテルからカート を引っ張って行き、汚いボールでラウンドしたが、散策 している人達との境界は明確でなく、日本であれば危険として禁止されるであろう。京都御苑(御所)が63ha、 万博公園全体が264haであることと比べると市内の中心 部に大公園があるというのは私達の概念を超えるものである。

〈路面電車〉

 1954年に廃止された路面電車を1995年復活した「トラム」は市中心部2.5kmを運行し、観光客を楽しませている。ボランティア団体が復活に働 きかけ市が鉄道を 建設し、現在は事 業の運営は民間企 業が行っている。

●雑記

〈歩道と車道〉

 西欧の都市で感じるのは、人間とクルマとが理屈なしで共存できる土壌があると言うことである。 写真は車道を盛り上 げて歩行しやすいようにしている例であるが、街では人間が最優先される。

 ニュージーランドを観て歩いたが、あらゆる人が生活やスポーツを楽しめる街づくりが自然にできていると感 じた。日本のまちももっと余裕のある地域の特性を活か した簡素な豊かさを追求する必要があるのではないか。


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