REPORT

本格着工から丸4年 開業目標は2009年春
「阪神なんば線」の近況

西大阪高速鉄道 久保田晃司

 今年の8月に、これまで「西大阪延伸線」と言っていた西九条〜近鉄難波間新線の名称を正式に「阪神なんば線」とすることを公表させていただいた(注:建設事業名称は引き続き「西大阪延伸線」です)。合わせて新設3駅の正式名称も、「九条」、「ドーム前」、「桜川」に決定し公表した。本格着工から丸4年が経とうとしているが、工事は順調に進めさせていただいている。

 


<セミシェルター型遮音壁>

<ビラを配布>

<ドーム球場のスクリーンで告知>

<小学生の現場見学>

 地下に新しく設ける3駅では既に建築工事に着手している。また、3カ所ある駅間のUターンシールドの区間は、1カ所は往復トンネルの構築が完了し、2カ所は往路トンネルが完了して復路の工事にかかりだした。高架部では、騒音対策で設置する「セミシェルター型遮音壁」の工事が進んでいる。

 この「阪神なんば線」は、大阪圏で中之島線(天満橋〜中之島間)と並ぶ大きな鉄道プロジェクトであり、市街地での工事なので、少なくとも現阪神線利用者など将来乗っていただけそうな方の多くにプロジェクトの存在くらいは知っていただいているだろうと思っていた。ところが、アンケートをしてもご存知ない方が非常に多い。

 そこで、何とかPRしなければいけないということで、正式な線名、駅名を公表後、今年8月の京セラドーム大阪での阪神6連戦を路線のPRに利用した。来場者にビラなどを配布したり、試合前にドーム球場のスクリーンに映像を映して告知するなど、野球の観客にも新線の存在をアピールした(注:広告主は阪神電気鉄道鰍ナす)。ビラを受け取っていただいた多くの方に「開業すれば便利になる」と言っていただき、うれしい気持ちにさせられた。

 「阪神なんば線」の課題は、これまで馴染みの薄い地域間を結ぶことである。大都市と郊外は鉄道路線とそのターミナルで結ばれている。阪神間に住んでいる人にとって大阪といえば「キタ」になるだろう。逆にミナミに職場のある方が郊外に居住地をさがすとき、大阪の南部や東部をまず連想するのではないだろうか。「阪神なんば線」は阪神間とミナミを結ぶのだから、人に行動を変えてもらおうとすると大きな努力が必要になる。

 また、阪神間と京都、奈良では、物理的にも時間的にも距離はあまり変わらないのに、阪神間の人にとって「古都」といえば奈良より京都のほうが身近に感じられるのではないだろうか。先日、奈良を訪れたが市内に車が多いのに驚いた。県庁周辺に散在する駐車場待ちの車がそれぞれ長い列を作り、広範囲にわたり周辺道路の渋滞を招いている。阪神間から奈良を訪れる観光需要にも大いに期待している。阪神間から2010年の平城建都1300年記念行事に行かれる時は、是非「阪神なんば線」を利 用していただきたい。

 開業目標の2009年春まであと1年半をきったが、路線の認知度を高め、それぞれの町をPRする努力をしていきたいと考えている。鉄道サービスの開始が人の流動を誘発し、少しでも関西の活性化に結びつけば望外の喜びである。

 PRといえば、先日、地元の小学校の3年生から6年生 全員、200名ほどが現場見学に来てくれて、かわいい声で「できるのが楽しみ」と言ってくれたことに大いに元気づけられた。最近では、地元の方、大学生、外国の方、同業他社の方などにも来ていただき、スタッフの昼間の予定の多くを見学会が占めている。路線のPRRだけでなく、「土木」や「鉄道」の世界を知っていただくためにも、 多くの方に建設現場をご覧いただきたいと思っている。


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