私の一冊

推薦者:前川晃三

役所を病気(うつ病)のため退職し、実家のおもちゃ屋を手伝いながら駅前商店街で暮らすようになって、7年が過ぎ8年目となりました。商人として、面白かった本を2冊紹介させて頂きます。役所に勤めていたのなら、読もうと思うことはなかったかもしれません。


京都人は変わらない    村田吉弘 著(光文社新書・680円+税)

筆者は「菊乃井」の3代目、京都に住み始めて18代目にあたる。この本を読んだ時期は、おもちゃ屋の経営は厳しく年々閉店する店ばかりで、自営業での新規出店もなく、商売替えを視野に入れる方がよいかも知れないと思った頃でした。

続いているものは、なんとなく続いているのではなく、継続するという意志がなければ、続いていくものではないということが読後の感想でした。京都の料亭はつぶれないというネットワークの力、長年助け合う、先代、先々代からの先輩後輩を築いている修行の仕組みがあること。目先の規模の拡大よりも、事業の継続を優先する価値判断。同じ土地で、お互い何代にもわたって暮らしてきた中でのお付き合いということが印象に残りました。


二代目社長!父を超えようと思うなかれ     河合徳治 著(展望社・1,400円+税)

この本は、現在従業員約30名のバリアフリー工事を手がける会社のイメージアップをねらった、社長の半生記かもしれません。多くの失敗を繰り返して身につけた従業員、後継者の育て方のポイントに、未熟な私は、「ご尤も」とうなずいてしまいました。面と向かって家族に感謝を伝えられない男が、出版を通して伝えたかった内容なのかもしれません。

家業あるいは零細企業の事業を引き継ぐことの1つの事例が、これほどまで生々しいものであり、そういう暮らしというものも知っておくことは、地域の力を引き出していく専門家にとって、もしかしたら必要なのかもしれないと思いました。


どちらの本も、1時間強で読める軽いものでした。商店街の中での暮らしは、40歳代はまだまだヒヨコ。60歳でようやく一人前という雰囲気があります。いろいろな業種・業界の方たちと話し合って行くためでもあり、いろいろな年代の人たちと話すためでもあると思います。私は、有り難いことに先代がまだまだ現役なので、店の中での修行が続いています。そろそろ表にも出て、恥をかいてみる時期が近づいているのだとも思います。


HOME  潮騒目次


     

inserted by FC2 system