主張

地球温暖化については議論しない

平峯 悠

 福田首相の引退の花道にはなったが、6月の洞爺湖サミットにはあきれ返った。環境サミットといわれながら議論は上滑りで全く意味のない会議に終始した。省エネ技術の普及をテーマとして議論すべきであったのに、贅沢な食事や各国の首脳の観光だけが目立った。そもそも地球温暖化とCO2削減は1997年の京都議定書に遡るが、各国の政治的思惑が強く科学的とはいえない。しかも最近では大雨や洪水、異常気象、地震や台風なども温暖化のせいにする傾向にある。極端ではあるが地球温暖化歓迎という意見は何故起こらないのか。環境問題は科学的なアプローチと実効性のある対策が必要なのに、「クールビズ」とか「エコ」という言葉に踊らされて大量消費に誘導されている。何かおかしいと感じている人は多い。

 現代は科学の時代といわれながら多くの不合理がまかり通っている。科学を装った非合理なことを「疑似科学」あるいは「エセ科学」という。総合研究大学教授の池内了氏は、疑似科学を3種類に分類する。

 1つは、科学的根拠がない言説によって人に暗示を与えるもの。お神籤、血液型、占星術等、テレパシー、オーラなどの超能力・超科学系で商売になるから恐ろしい。第2は、科学を援用・乱用・誤用・悪用したもので、マイナスイオン、ダイエットのための健康食品など科学的な実体がなくとも、テレビが取り上げ、しかも科学用語を乱用することにより大衆を信用させる。第3は、科学の対象であっても複雑なシステムであるが故に真実を明らかにしがたい事象で、疑似科学と真性科学のグレーゾーンに属するもの。地球環境問題や電磁波公害のほか、狂牛病、遺伝子組み換え作物、地震予知など現在社会問題になっていることの多くがこの範疇にはいるという。

 地球は複雑系の最たるもので、地球環境問題は簡単には将来予測ができず、嘘か本当かがよく分からないため疑似科学に陥りやすい。これまでの分析で地球全体での温暖化は進んでいるようで、また温室効果を促進する二酸化酸素が増えていることも間違いないらしい。しかしその原因や因果関係ははっきりせず、温暖化したとして日本がどの程度ダメージを受けるかも分かっていない。従って一方的に白黒に決めつけてしまうと不毛な議論になってしまう。現在の環境問題はCO2排出量削減がお題目になってしまい、それが各国の政治的な取引や個人に対してもCO2削減をモラルとして押しつけている。一方、企業はCO2削減を商売のネタにしている。

 地球温暖化の是非にかかわらず省エネルギーはしたほうが良いのに決まっている、また資源を有効に利用すればよいのも当たり前である。日本の技術レベルは世界一であり、まじめに省エネルギーや脱硫を行ってきた。技術者が行うべきことは科学的にエネルギー問題などに真剣に取り組めばよいのであって、地球温暖化防止のためのCO2削減を目的にするような議論や環境利権に振り回されてはならない。食料自給率を向上させるための生活の改善、省エネルギーに貢献するまちづくり、公共交通と自動車との効率とバランスを図る交通のあり方、生活を豊かにする自然環境の保全と創出など、これまで行ってきた取り組みを一層充実させることが重要なのである。

 今後、私としては科学的な証明も検証もできない地球温暖化という不毛な議論には参画しないことにしたい。


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