水都大阪の活性化担う「中之島線」10月19日 営業運転開始へ

京阪電気鉄道株式会社
鉄道事業部 平川良浩

 平成15年春から建設工事が進められてきた「中之島線」が完成し、いよいよ10月19日から営業運転が開始される。中之島線の概要について紹介する。

 中之島は、大阪の行政、経済、文化の一大中心地として現在に至っているが、新線建設前の中之島は、東西方向の交通が不便のため、特に西部地区の開発が遅れ、近年の梅田や難波と比較すると開発が停滞し、衰退化の傾向にあった。そこで、東西方向の交通軸を整備することにより、この地区の利便性を高め、人の流れに大きな変化を与え、この地区の活性化を図るために新線が計画され、建設された。施設は中之島高速鉄道(株)が保有し、列車の運行と駅業務を京阪電気鉄道(株)が行う。

●償還型上下分離方式で建設

 中之島線は、京阪本線天満橋駅から中之島西部地区に至る約2.9kmの路線である。本来であれば、京阪本線淀屋橋駅から西へ延伸することが旅客の乗り継ぎ利便性及び列車運行管理上望ましいが、既設の大阪市交通局御堂筋線との地下深度の関係から、淀屋橋駅から延伸して交差することが物理的にできないため天満橋駅から分岐して建設した。建設にあたっては、償還型上下分離方式による地下高速鉄道整備事業費補助の適用により行われた。

●4駅はシンボルゾーンに相応しいデザイン

 中之島線には、東から「なにわ橋駅」、「大江橋駅」、「渡辺橋駅」、「中之島駅」の4つの駅がある。各駅は、水都大阪のシンボルゾーンにふさわしいようにデザインを行った。水のきらめきを表現する「ガラス」、公園に囲まれた自然の豊かさを表現する「木(無垢)」を共通使用した。

 中之島駅は、大阪国際会議場、リガーロイヤルホテルなど、国際都市としての施設が集中するエリアなので、中之島線全体を象徴するように、コンコースとホーム階の壁面に全体の共通テーマである木を使用した。渡辺橋駅は、再開発が進む中之島の未来をイメージして金属材を使用した。

 大江橋駅は、市役所、日本銀行など現在のデザインを継承して石を使用した。なにわ橋駅は、中之島公園内にあるため、周囲の景観に配慮して、出入口部分には世界的な建築家・安藤忠雄氏が設計をおこなった。ホーム階の壁面は、中央公会堂をイメージしてレンガ調の素材を使用した。

●沿線周辺開発も本格化

 中之島線は、大阪の文化、ビジネスの中心地である中之島を東西に貫く路線であり、特に中之島西部地区の鉄道空白地帯が解消される。この結果、新線着工が起爆剤となり、ビックプロジェクトが次々と動き出している。中之島西部地区では2000年以降、大型の商業・オフィスビル(10棟)やマンション(2棟・約700戸)、病院、美術館等が既に完成している。今後、中之島2丁目、3丁目では、以下に示すように既に大きな開発が行われており、今後も順次着工する予定である。また、既存ビルにおいても建替え計画が公表されている。

▽中之島フェスティバルタワー(仮称)=延べ床面積約13万uの複合高層ビル2棟、東棟2013年、西棟2019年(計画発表済み) ▽中之島ダイビル=延べ床面積約8万u(建設中)、2008年度完成予定(3丁目共同開発)

▽中之島ダイビルウェスト(仮称)=延べ床面積約5万u(計画発表済み、3丁目共同開発)

▽N4タワー=マンション約350戸

▽京阪・大林共同開発=ホテル・オフィス・商業の複合高層ビル(計画中)、2012年度完成予定

 このように、中之島線は水都大阪の活性化を狙った新線である。新線は、中之島西部地区の開発の起爆剤的な役割を担うため、今後の沿線開発の結果によって評価される鉄道路線である。よって、大阪の活性化のために官民一体となって中之島線による開発を成功させたいと考えている。


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