20年度現地シンポジウム 高松市を訪問

琴平電鉄 鉄道〜商店街

シームレスなまちづくり目指す

 地域デザイン研究会(平峯悠理事長)の平成20年度現地シンポジウムは9月5日、6日の2日間、ICカードの活用で鉄道など「公共交通」と「商店街」との継ぎ目のない融合によるまちづくりが試行されている高松市を訪れ、高松琴平電気鉄道(ことでん)本社関係者から同社の取り組みを聞くとともに意見を交換。また、再開発が進む丸亀町商店街や周辺商店街の状況を視察した。
(文と写真:大戸修二、伊藤可奈子、金田徳蔵、戸松稔)

■「ことでん」再生、自立への取り組み


ことでん本社関係者との交流会

 ことでんは、そごう破綻やグループ企業の業績不振から平成13年12月に民事再生法適用を申請。翌14年8月から新経営陣のもとで会社再生へ向けてスタート。再生計画の履行、利用者100万人増・県民支援100万人を目指す「ことでん100計画」の実施に一丸となって取り組んだ。

 「顧客本位」とうい観点からは、例えば顧客からのクレームに即座に対応するIT活用の「イルカボックス」システムや、ヒヤリハットに対応する「事故ボックス」システムを構築、クレームやトラブル情報の共有化を徹底。省力化を含む様々な努力の結果、17年には民事再生手続きの終結決定がなされ、自立への新たな一歩を踏み出した。昭和49年をピークに減り続けていた輸送人員も、ここにきて増加に転じ、18、19年度と上昇カーブを描いている。

■ICカード導入 発展的な活用目指す


ICカードIruCa


簡易自動改札機

 同社の取り組みの中で注目される1つがICカード乗車券(IruCaカード)の導入と発展的な活用だ。真鍋康彦社長は、社長就任の直後にICカード先進地の香港を視察し導入を決意。約2年後の17年2月から導入を開始した。真鍋社長は「電車・バスの乗車、そして買い物を含めたまちづくりの共通カードとして定着したい。1企業の枠を超え、高松市、香川県へと広がる可能性も」と期待感は大きい。

 IruCaカードの主な特徴は、

  1. 利用者に応じたワイドなカード券種(フリー、定期、スクール、キッズ、シニア、グリーンの6種類)
  2. 回数割引サービス
  3. 乗り継ぎ割引サービス。

導入後3年半が経過したが、発行枚数は12万2000枚(20年8月現在)、1日当たり利用件数1万4,000件にのぼり、利用率は78.4%と高い。

■電子マネーへと展開 ポイントサービスも

 同社ではIruCaカードをICカード乗車券の域にとどまらず、買い物など幅広く展開できる地域カードにすることを目指している。きっかけになったのが、瓦町駅前商店街のシャッター街化という現状だった。まちの魅力を高めるため、1枚のカードで鉄道と中心市街地とをシームレスに融合できないものかと、電子マネーサービスへの展開を検討。18年1月に発足したデジタルコミュニティ構想推進協議会で電子マネーサービス実証実験を実施。19年度には電子マネー利用可能店舗を150店舗に拡大、今年2月からはポイントサービス(1ポイント100円)を導入した。 加盟店舗以外に駐車場、文化施設、体育施設などの公共施設、観光地、レンタサイクルへと利用範囲は広がりを見せている。ポイントサービスの開始を契機に、電子マネー利用件数は急増した。ことでん関係者は「電子マネーはあくまで顧客サービスの一環。利便性が高まるこICカードIruCa簡易自動改札機とで、電車・バスの利用率向上につながれば」と話す。

■商店街と大学の連携

 新たな活用手法として、20年度には香川大学との提携でICカード「IruCa」と大学生協カードを一体化させた学生証・職員証を発行、商店街との連携によるIT支援型多世代交流まちづくりを目指している。さらに医療分野にも拡大し、患者本人が電子カルテを閲覧できるという医療IT関連の取り組みも始まるという。

■シャッター街解消へ様々な取り組み

 一方でシャッター街化が進む南部エリアでは、商店街活性化のため瓦町駅周辺まちづくり協議会が様々な取り組みを進めており、同社も側面から支援する。活性化策の1つとして、地域に思い入れを持つ人たちが店舗紹介を盛り込んだフリーペーパー「瓦版」を創刊し、これまでに2号を発行した。イベント開催を含めた様々な活動が、現時点ではシャッター街化解消にはつながっていないものの、活性化機運が盛り上がってきたのは確かという。


高松丸亀町商店街再開発事業


丸亀町商店街G街区市街地再開発組合事務所での意見交換


再開発が完成した丸亀町商店街A街区

A街区完成、G街区計画軌道へ

 現地シンポジウム2日目の9月6日には、高松市丸亀町商店街G街区市街地再開発組合の事務所を訪れ、植村博理事長ら組合関係者からG街区の事業概要、進捗状況、課題などを聞くとともに、意見を交換をした。

 地域デザイン研究会では8年前、現地シンポジウム「民間主導のまちづくり」として丸亀町商店街を訪れており、当時計画中だったA街区の再開発はその後の進展で平成18年に完成。新たな魅力あるまちへと変貌している。

 G街区は平成19年5月に中心市街地活性化基本計画の認定を取得しており、早期着工へ向けて計画は軌道に乗りつつある。同街区では高松都心の回遊性ルートの結節点地区として、また郊外型店舗に負けない商業環境の形成を目指している。再開発の権利変換スキームは、保留床だけでなく権利床と合わせることにより、投資効率の高い運営を目指している。そして、商店街の街路の中央部は自転車道として運用することにしている。

 課題もある。香川県では郊外型量販店が多いところであり、昨年もイオンの進出にともない、G街区でのシネコン構想を断念した経緯がある。同組合の植村理事長は、「行政には長期的視点からまちづくりを指導してほしい」と話していた。 意見交換を終えた一行は、前田さん(地デ研会員)の先導で丸亀町商店街470mを歩いて視察した。


G街区完成イメージ

再開発事業の街区構成


●現地シンポには地デ研会員14名が参加
今回の現地シンポジウムには14名の地デ研会員が参加しました。参加者(50音順)は、伊藤、岩本、大戸、岡村、小川、金田、鎌田、戸松、中井、平峯、前田、松島、蜩c、山部の皆さん。


スナップショット


■ことでん本社を訪問

■高松築港地区を散策

 

■ことでんに試乗
IruCaカードを使い栗林公園から「ことでん」に試乗、瓦町駅で下車。山頂へはバスに乗った。四国巡礼の1つ「屋島寺」にお参りした。(金田)

■屋島での記念撮影
焼肉・魚介類をいただきながら見た夕焼け・夜景は絶景でした。ことでん関係者との懇親会も盛り上がった。大変お世話になったことでんの皆様に感謝!感激!です。(金田)


■丸亀町商店街を歩いて視察
8年前に訪れた時点では基本計画段階にあったA街区のまちづくりが壮麗に実現。G街区の計画は、A街区の成功に刺激を受けたところが多分にあると感じた。(戸松)

■イサム・ノグチ庭園美術館での記念撮影
以前、岡山の石屋さんに話を聞く機会があった。「石は呼吸している。 彫るときはどう彫って欲しいのか会話しながらやるんだ」と。石も 意思を持っている。イサム・ノグチはどんな会話をしながら彫った のだろうか。イサム・ノグチに身をゆだねることで、意思を表して
もらったのかもしれない。2つの意思が重なって見えた。(伊藤)
■商店街に人を呼ぶフリーペーパー「瓦版」
みんなでまちをつくろう。瓦町駅周辺まちづくり協議会が発行したフリーペーパー。地デ研会員の泉英明 さんもマネージャーとして関わる。テーマは第1 号「ファッション」、第2 号「ママ」。次号のテーマは「転勤族」、次々号は「シニア」という。継続は力なり。(大戸)

■屋島で出会った猫
ちょっと警戒しながらも、見知らぬ人に近寄ってくる。その甘え上 手なこと。時々猫になりたいと思うことがある。動物は皆そうだが、 今この時を生きている。わからない先のことなど考えない。今を大事に生きること、私も常にそうありたい。猫を見ていていつもそう 思う。この日、この子達には大変なご馳走だったに違いない。肉も 魚も沢山食べた。さぞかしゆっくり眠れたことだろう。(伊藤)

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