中国四川大地震の被災地を視察

〜日中復旧・復興セミナーに参加して〜

片瀬範雄(株式会社パスコ神戸支店)

 5月12日午後2時28分に中国西部地域で発生したM8.0の「四川省汶川大地震」は阪神・淡路大震災の30倍のエネルギーで、死者7万人、行方不明者2万人と過去最大級の人的被害、被災地面積は日本の4分の1にあたる10万平方kmに及んだ。北京オリンピック(8月8日開幕)を控えたお祭りムードのなか、最後の準備に追われる中国国内に止まらず、全世界に衝撃を与えた。

 神戸市役所においては先の大震災の際に支援をいただいたお礼の気持ちを表したいと、いち早く「復興支援チーム」を庁内に結成し、「潮騒」84号に掲載した神戸防災技術者の会(略称K−TEC)もメンバーの一員として参加。「阪神・淡路大震災―神戸市の記録」「復興計画」など各種資料を中国に発信するとともに、勉強会を行い、いつでも要請があれば職員を派遣できる体制を整えていた。そして6月下旬に国際協力機構(JICA)よりセミナーへの参加要請があり、森長岡市長、兵庫県職員など9名の調査団に市職員1名と私が参加することになった。

●「協働のまちづくり」を講演

 セミナーは7月1日、2日にJICAと中国政府住宅・
都市農村鎮建設弁公室主催、清華大学のコーディネートのもと、中央および地方政府職員、大学関係者、研究者など150名が参加して北京市内で開催された。

 私に与えられたテーマは「被災地域の復興まちづくり計画策定」で、私の参加を推薦した国土交通省からは、「2段階都市計画」とそれを実践した仕組みの「協働のまちづくり」を中心に講演することを要請された。

 宇宙衛星からの写真なども使って説明をしたかったが、緯度、経度などが記載された地図を持つ人が拘束されたという情報もあり、またチベット暴動のニュースが流れている時でもあり、発言についても慎重を期する必要を感じながらの準備であった。

 土地や建物の所有関係、法制度、街の成り立ちなどが日本と異なる国において、「協働のまちづくり」の意味が通じるか、政府命令が重視される国で市民と一緒に復興をした経過を話すことが思想誘導ととられないかと戸惑いもあり、発言内容は公共施設の復旧過程や耐震補強などテーマの幅を広げ、メインは控えめな内容で発表することになった。

 その後、コメンテーターの清華大学公共安全研究所長・願林生氏(名古屋大学留学を含め12年間滞在)より、「共同住宅の土地は国有、床は個人所有でローンも残っている」「住民は耐震性に対する不安感からテント生活をしている」「日本の協働再建の取り組みを参考にした復興を目指したい」とコメントが述べられた。

 4日に行われた成都市における地方政府職員とのデスカッションでは、環境に配慮した復興のため、瓦礫のリサイクルのノウハウについて質問された。これらの質問については帰国後資料の提供や研修生の派遣に応ずると回答した。

●仮設住宅は100万戸計画

 3日、4日の視察では、震源近くの山間部には道路の被災が激しく行くことはできなかったが、エコツーリズムを掲げて村おこしを進める中で全滅した鎮や、レンガとブロックを主材料とする住宅の被災の状況、都江堰市や綿竹市の共同住宅の被災状況、そして仮設住宅を視察した。

 仮設住宅は100万戸を計画しており、既に35万戸が建設済み。その建設にあたっては沿海部の経済的に優位に立つ省や都市が政府の指定した市や県、鎮のカウンターパートとして支援する方法がとられており、復興にも同様手法をとると聞き、政府が各支援者間で競わせている感がした。

 なお、a江沿いの山間部等の激震地に調査に入った神戸大学名誉教授・沖村孝先生の写真を見た時、我々が視察した範囲は限られたものであり、再度訪中して激震地の視察をするとともに、復興を支援していきたいと考える日々である。


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