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ペンリレー

未来の若き都市計画家の誕生

吉村方男(アジア航測株式会社)

 「吉村先生! 俺、鹿島建設受かったから」「ちょっと、俺にも代わってや!先生!俺も積水化学受かったし、ホンマありがとな!」

 電話が入ってきたとき、私は社内会議の最中であったため、一旦「後でな」といって電話を切った。

 その後の夜、神奈川県の居酒屋には、一人マスターと自分のことのように嬉しがっている自分がいた。彼達を教えていたのはもう10数年前、私は関西で世間では有名と呼ばれる予備校の教師をしていた。

 今、彼らの中学生の時を思い浮かべ一言で表すと「やんちゃ者」でした。当時の私からしたら「ろくに勉強もしないとお前ら!」なんてゲンコツを落とし、その後お母さんに対し、「すみません。ゲンコツ落としてしまいました」という日々の戦いでした。

 思えば、高校での理系文系の進学でも相談があり、

 「先生、俺、理系か文系のどっちへ行けばいいのかな」

 「その前に、お前は何がやりたいのか」

 「大学キャンパスライフを満喫して今流行のIT関係大学に入りたいです」

 瞬間唖然となりましたが、私も一応先生だったので、頭の中で整理して話した。

 「何かものづくりして大きなことがしたいのか」

 「はい。何か大きなことがやりたいと考えています」

 「じゃあ、土木か電気か機械系だな」

 「なんで」

 「全ての学問はこの3つから生まれたからね。ものづくり基礎を学ぶのは本当に楽しいし、情報なんて今は流行りだけど、基礎は全ての応用になるからな」

 そんな連中が、今は22歳。いつの間にという成長の変化に本当に驚嘆しています。

 その後、私と同じ土木工学を専攻し、大学も同じだったことは本当にびっくりしましたが、日本の街をいい意味で変えていきたいという、彼らの意と風が伝わってきたことに対し本当に嬉しく思うとともに、教師をやっていて本当によかったと思いました。

 今、私は「公衆衛生」に取り組んでいます。全人類が平和に暮らすことができるまちづくりの支援が出来ればと考えて、日々いろいろな方面で活動を行っております。

 世界の発展途上国は5人に1人が飢餓と水で苦しんでいます。10秒に1人が水による疾病で苦しんでいます。その人たちに対して、土木を通じて笑顔あふれる街づくりに貢献できることが、私にとって本当の幸せです。

 人は1日あたり2000calの摂取で、十分に生存していくことができます。日本を始めとした先進国が、食べ残しの問題に対して少しの配慮をすれば、発展途上国の子供たちに分け与えられる食料を十分まかなうことができます。

 視点を日本に向けると、日本では生活習慣病(メタボリックシンドローム)に思い悩んでいます。これによって、将来発生する生活習慣病(裏で言う贅沢病)による医療費の高騰が問題視されています。

 日本にとって大事なことはこれに対する投薬対策ではなく、いかにして世界一健康な街づくり施策を行うかが重要ではないでしょうか。町内会主催の街づくりイベント等を行うことで、病気予備軍を外出行動させたり、健康診断を受けさせる仕組みづくりが重要です。日本の健康診断の受診率は現在25%程度。これを平成24年までに65%以上にする必要性があります。

 健康診断の受診率を上げることが目的ではなく、健康状態を増進させることで、地域活性化や消費促進につながり、経済が循環していくという仕組みづくりが施策として重要ではないでしょうか。

 私の話はここまでにしますが、「街を変えたい」という若き都市計画家の誕生を、私は本当に嬉しく思いました。


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