私の一冊

変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから

清水義晴+小山直 著(太郎次郎社エディックス 刊)

推薦者:伊藤可奈子

 先日、映画「降りてゆく生き方」(武田鉄矢主演)をみた。自主上映映画でロードショーはしていない。外資系リゾート開発会社に勤める団塊世代のサラリーマンが、地方のある開発をめぐり、地域の人々とかかわりを持つ中で、自分の生き方に疑問を抱くようになる。そして、成功報酬の3億円を捨てて地域の人々と一緒にまちづくりをしていくという内容だが、この映画の原案となったのがこの本である。

 全国にはいろんな形でまちづくりに携わっている人たちがいる。著者の清水さんもその一人だが、大上段に構えるのではなく、自立した個人が緩やかに連携し、人々がまちと「出会いなおす」のを助けるのがまちづくりコーディネーターの役割と語っている。じつは清水さん、この本のまえがきを書いただけで、本文はまちづくり仲間の小山直さんがインタビューを重ねて書き上げた。なぜなのか。「自分が考えていることを書くことなら出来るが、それではつまらない。私を揺さぶって引き出してもらいたい。私はいつも誰かと一緒に何かを始めてきた。そういう共同作業が好きだ。だから共著にすることにしよう」と共同作業のいきさつを語る。揺さぶって引き出し、一緒に行動する。この考え方がまちづくりの根幹にあるのだろう。

 「まちづくりは人づくり」と言われるが、人間社会には思いやり、いたわり、愛がやはり必要なのだ。降りてゆく生き方も捨てたもんじゃない。新政権になった日本だが、人を大切にする社会であって欲しい。


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