「地域遺伝子」に関する調査について

2年目の今年度は寝屋川などで実

下条章義

 地域デザイン研究会では、(社)近畿建設協会の支援を得て「北河内の地域遺伝子を活用した街づくりの試み」の調査を実施しています。昨年度の枚方市域を対象とした調査に引き続き、2年目の今年度は寝屋川市、交野市、四条畷市、大東市、守口市、門真市の各市について調査を進めています。


守口宿本陣跡

 「地域遺伝子」とはあまり聞きなれない言葉です。動植物の遺伝子と同様に人間の暮らす地域には山野、河沼等の自然地形、風景のほか、連綿と引き継がれている生活習慣、風習、伝承されてきた芸能や年中行事、街並みを構成する街道や建築物や記念碑、お寺や神社の役割、言い伝えられてきた水害、地震等の災害、輩出した義人、学者、政財界人の影響等々が必ず、どこにもあるはずです。このような地域の人々の暮らしの中で維持、継承されている地域固有の事象、要素を「地域遺伝子」としてとらえ、それ等を現代の都市計画や街づくりに生かしてみようという発想から調査が始まりました。

 現在の都市計画や街づくりでは人口、住宅戸数、地域・地区・道路・公園等の面積、延長、それ等の時系列的変化や比率など数値化されたデータを基礎資料として計画や事業化がされがちですが、人々の暮らしに根ざした「地域遺伝子」は、数量化は難しいものの、都市計画、街づくりを考える上で地域に密着した重要なファクターではないかと考えています。


文禄提跡を活かした道路

 調査方法としてはまず文献、地図等の机上調査から手をつけそこで「遺伝子的な要素」を見つけ出し、現地踏査して確認、修正するとともに新たな発見なども期待しています。加えて当該地域で長年暮らしている人々からの聞き取り調査となります。ただ数百年以前からの言い伝え、超常現象に基づいた地域遺伝子的要素といっても調査能力の限界を越えると判断し、調査内容に確証のできる文献、測量技術に基づいた地図などが活用できる主に明治時代前後からの地域遺伝子を基本的に取り上げよ
うとしています。

 地域に伝わる遺伝子とはどういうものがあるか、これが調査の第一歩ですが、今後はそうした「地域遺伝子」をどのように生かして都市計画や街づくりを考えていくか、更に関係する行政機関等に対してどのような提言・提案をするか議論を深めていきたいと考えています。

inserted by FC2 system