私の一冊

緒方家五代 医の系譜 緒方惟之著 燃焼社刊

推薦者:大戸修二

 江戸末期の医師で、大村益次郎、福沢諭吉らを輩出した「適塾」の創始者・緒方洪庵(1810〜1863)。洪庵の直系5代目にあたる惟之氏が緒方家5代を紹介した本。

 同書には、緒方家初代の洪庵から、惟準、_次郎、準一、惟之まで直系5代の歩んだ道が、日本の歴史背景を含めて分かりやすく描かれている。著者は今年85歳を迎えたが、4年前まで奈良で町医者を続けてきた。「長く働いたことだけは、先祖にも恥じないと思っている。緒方の体面をけがすこともせずにすんだのだから、頭の一つでもなでてほしい気持ち」と語る。

 私は2年前、著者に取材でお会いしたことがある。北浜の「適塾」隣にある洪庵像は、最も似ているということから惟之氏をモデルに造られたという。「医の世に生活するは人の為のみ…。『扶氏医戒之略』(江戸時代に緒方洪庵が門人に教えた、医師が守るべき戒め12カ条)が緒方家の“座右の名”のようなもの」と話されたことが印象的だった。

 今年は緒方洪庵生誕後200年にあたる。ぜひ読んでほしい「一冊」である。


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