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無縁社会

伊藤可奈子(アトリエ・K)

 NHKの番組で「無縁社会」というのがあった。取り上げていたのは、孤独死。病死または自殺で遺骨の引き取り手がいない、あるいは親族がいても何らかの事情で引き取らず、役所に任せる。そういう現代社会の現状を「無縁社会」というのだという。犯罪を犯したわけでもなく、ごく普通に生きてきた普通の人。その人生において様々な人とかかわってきただろうに、孤独死といわれる最後。

 番組は、この無縁死が人との関係性が薄い寂しい世の中、薄情ともいえる社会への問題提起をしていたように思う。独居老人の孤独死を悪いという言葉が適切かどうかわからないが、そういうニュアンスで報じられることが多いが、一人で死ぬことはいけないことなのだろうか。一人で死ぬ。これは至極当然のこと。どういう死に方であるにせよそこが寿命ということだ。

 問題は深い絶望感の中で死んでいったのかと故人の思いを想像したときに起きる罪悪感と社会に向けての絶望感だ。死は悪いことではない。どんな生き物でも必ず訪れる。生老病死。しかし、生きて死んだその時に「お疲れ様」と一言かけてあげたいのは誰もが同じ思いだろう。ずっと、その人を知っている必要はない。昨日今日知り合ったくらいでもいい。最後が近いだろうその時に、近くにいれば無縁とは言わないかもしれない。

 無縁社会とは社会のなす業なのか、人という厄介な生き物の業なのか。いつの時代でもあったことなのか、よくわからない。生きる即ち四苦八苦とは、この「無縁」も含んでの事なのか。


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