主張

日本再生考

山部 茂

 首相が毎年替わる国。とことんまで外圧によって追い込まれなければ、何も決めることが出来ない国。 このままでは駄目だと悟っているのに、決断を先延ばしにして政争に明け暮れる国。

 こういった国のあり方と自民党に愛想をつかせて政権交代を求めたはずが、事態はより悪くなった気 がする。国民の多くが感じているのはそういったところか。

 3月11 日の東日本大震災は、このような我が国を目覚めさせるに十分なインパクトを国民に与えた。 地震災害、津波災害、さらには福島第1原発事故と3つの災害に見舞われ、その影響は復旧・復興に関する様々な対応から各地の原発の停止に伴う電力危機、さらには核汚染に伴う食料の安全保障問題、原発の再開に伴うやらせ問題などあらゆる方面で、この国の課題や問題点が噴出している。これらの問題 を解決すべき政治は、首相の退陣問題をはじめとす る政争に明け暮れて国民や国の舵取りには力を入れ ていない。

 阪神大震災とは規模も死傷者・行方不明者の数も 桁違いに大きく、被害エリアは青森県から千葉県に至り、復興にかかる費用や時間は我々の想像だに出来ない。

 私事で恐縮だが、この6月で38 年間勤めた鉄道会社を退職し、新しい職場に赴任した。思い起こせば様々な事故や災害を経験し、良くも悪くも高度成 長期からオイルショックによる不況、バブル期を経 て長期にわたる低成長期までをも経験してきた世代となった。

 国際的な面でも、東西の冷戦がベルリンの壁崩壊とともに、いとも簡単に崩れ、幾度も繰り返された石油危機を乗り越え、「一本のズボンを数人が履く」 と言われた中国が、いまや世界第二の経済大国になることなどは入社時には想像だにしなかった。

 年齢もちょうど60 歳、還暦ではある。定年も当 初の55 歳が5年のび、雇用延長制度もある。近所を 見渡しても、60 歳を超えた元気な高齢者が多い。(地デ研のメンバーもこの世代が主力ですねえ。)皆さんは今、何をされているのか、それを垣間見る機会を得た。

 東日本大震災のあと、全国からボランティアが被災地支援に集まってきた。地方自治体も競って市民 を対象とした災害ボランティアバスを運行し、被災地に出向いた。私も人生の区切りの時期でもあり、 阪神大震災の時には被災地を見て回るだけで何もし なかった自分の贖罪の思いもあって、参加することにした。

 最初に応募した時には自治体側の選抜があり、年齢や経験などの条件で選に漏れた。次に応募した時 にはタッチの差で補欠に回り、3度目でようやく選ばれた。行きのバスでは自己紹介とそれぞれの思いを語る場が設けられたが、最高齢72 歳をはじめとす る50 代後半以降の中高年の参加者が4割ほど見受け られた。

 曰く、テレビを見ていて自分の出来うることを求 めていた。阪神大震災の時に助けてもらった御礼を したかった。夫婦で話し合って一緒に出来る社会への恩返しをしたかった。まだまだこの国は、捨てた ものではないとの思いを感じる時間だった。


HOME 潮騒目次

inserted by FC2 system