「釜山都市計画開発セミナー」のうち「慶州の旅」に参加して

パシフィックコンサルタント大阪本社

松 田 時 和

 皆さん、こんにちは。今年の5月に入会させてもらいました。

 11回総会と懇親会には参加させてもらいましたが、その後は、皆さんの分科会等の活動を、メールで知る程度で、それでも、会員皆様の教養の多様さ、深さ、博学さ、活動に対する姿勢の熱心さに、圧倒され、感心しております。

 今回、現地セミナーのご案内をいただき、熱心なお誘いと、そのスケジュールの大半が、釜山広域市の事業と町並みの視察、特に最終日には「慶州」まで案内していただけるということもあって、自分でも動機は不純だな、と思いながら参加させてもらいました。

 予想通り、8月27日の意見交換会では、簡にして要を得た現状の説明と、活発な意見の交換がありました。

 特に、釜山市が用意されたという研究会の討議資料、参加者の顔ぶれからも、釜山市側の意気込み、当方地域デザイン研究会への期待の大きさが、ひしひしと伝わってきました。 ただ、個々のテーマの内容については、細部の点で少しかみ合わないところ、参考にしにくいところがあったようで、これは、都市の成り立ち、大きさ、権限などの違いによるところが大きいのかな、と思いながら拝聴していました。

 都市計画区域面積にしても、釜山広域市が約950平方km(府域面積が約1890平方km)で、そこにわが国でいうと政令都市並の行財政力と権限が付与されているような感じで、少し前まで府におった私としては、うらやましく思いました。

 また、地下鉄の建設について、計画や建設費の説明、工事現場の視察をさせていただきましたが、生活レベル、物価の違い、国際間のレートが有るとしても、km当りの建設費が300〜400億ウオン(30〜40億円)、運賃が全線500ウオン(50円)はいかにも、という感じでしたし、工事現場での管理状況(周囲への配慮)にも、おおらかさを感じました。

 釜山広域市全体の公共施設の整備については、次回のサッカーのワールドカップの開催に向けて、大阪の万博当時と同じように、市を挙げて努力しているというところで、まさにingという感じでした。

 さて、8月29日の慶州は、金城さんにたててもらった適切な行程案にしたがって、国立慶州博物館、仏国寺、普門観光団地、大陵苑、などを巡ってきました。
 費用的には、6人乗りの運転手つきレンタカーを、朝8時から夕方の5時位まで拘束し、1個所所300〜3000ウオンの入館料と高速料金を含んで、一人あたり14万ウオン、日本円で1万4千円(レンタカー屋さんに手違いがあったとはいえ)と、ちょっと信じられないような値段でした。

 慶州までの距離行程は、釜山の中心地から60km位で、大阪を中心にしますと、和歌山市、大津市、または淡路島の入り口岩屋といったところです。

 ほとんどが、京釜高速道路を利用し約1時間強で、最初の掛陵(クェヌン)に着きました。

 ここは、統一新羅時代の王陵のなかで、もっとも原型を残した美しいもので、その古墳のまわりをペルシャ人風の12人の支神に守られており、全容は、ゴルフ場でいうラフの中に円墳がひとつぽつんとあるような、ひっそりとした陵墓でした。 そのせいか、訪れる人も少なそうで、日曜日でありながら、入場料は無料(時間が早すぎたのかも)でした。

 慶州博物館は、その収蔵物が3万点以上といわれる国立の博物館で、興味の有る人にとっては、時間がいくらあっても足りないくらいの出土品が展示されていました。 何事にも興味を示す我々ツアーの一行は、案の定予定時間をオーバーし、運転手さんをやきもきさせてしまいました。

 見るからに高価で貴重な多くの遺物が、常設的に親しみやすく公開展示されているこのような大規模な施設をみて、この国の、自国の歴史を大切にしようとする姿勢の一端を(このあと見学した仏国寺、古墳公園でもそうでしたが)を垣間見たような気がしました。   

 また、この博物館へのアクセス道路も十分に整備されていたようで、慶州の市街地にも近く、その上時刻的にもいい時間であったのか、外国人(我々もですが)の家族が、タンデム自転車でこられていたのを微笑ましく、うらやましく眺めておりました。

 観光地の自転車の利用は、仏国寺などの山岳地はそうでもなかったようですが、普門湖観光団地、古墳公園などの平地では、多く利用されているのが印象的でした。

 新羅仏教芸術がほぼそのまま継承され、再建されたといわれる仏国寺のあと、石窟庵を訪ねましたが、その発見されたいきさつはともかく、真っ白な花崗岩に丸彫りされた、約3.5mの釈迦如来坐像には、さすがに一見の価値有りと思いました。 ガラス越しにしか見られないのですが、やはり人気が有るようで、ハイキングがてらの拝観者が多く見られました。

 普門湖観光団地は、普門湖(人造湖?)の湖畔に開発された大規模な観光地で、周辺には、ゴルフ場や、慶州ワールドなどの大規模な施設のほか、カジノをそなえたヒルトンのほか、現代、慶州朝鮮、コンコードなど世界有数のホテルが立地している一大レジャー基地です。 しかしながら、昨今では、若干のかげりが見えているそうです。

 最後には、大陵苑ともいわれる古墳公園を訪れましたが、その規模と美しさには感銘を受けました。 この地域の一帯は、古墳が集中しているところで、そのうちの23基の古墳群の周囲を石垣で囲い、公園として維持・管理し一般公開しているものです。 盗掘されているものが少なく、順次内部の調査を進めているようで、うち天馬塚と名づけられた一塚だけが、内部見学を許されていました。 内部は、被葬者達や、併せて埋葬された馬具、装飾品、武器、土器などを出来るだけそのままの状況で展示(?)しており、見学者の興味を高めるような工夫がなされていました。

 実際には、まだまだたくさんの個所を予定していただいておりましたが、一つ一つの個所の質と量、参加者のわがままもあって、時間が足りなくなり、あとはあきらめざるを得なくなってしまいました。

 今回のセミナーを通じて、図らずも、釜山と慶州という二つの都市、港町・商工業都市としての釜山と観光都市としての慶州を見ることが出来ました。 特に慶州は観光地というほんのポイントに過ぎないところしか見ていませんが、これからの都市にとっては重要な要素になる集客の工夫を、いかに歴史遺産という要素があるとはいえ、慶州という地方都市がしているのか という新しい興味を湧かせてくれた旅でした。

 最後になりましたが、このセミナーをお世話くださった方々、特に慶州の旅に、旅程を一日伸ばして付き合い、我々の面倒を見てくださった金城さんに、心から、お礼を申し上げさせていただきます。

 本当にありがとうございました。


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